ザ・ユー・エイ・ビー・リサーチ・ファンデーション(UAB RES FOUND)の特許「幹細胞移植方法」(特表2018-525417)を読みました。
造血幹細胞移植(HSCT)において、ドナーT細胞の移植、免疫の再構築、およびGVTなどの有益な効果を最大限に高める一方、GVHDなどの有害な効果を最小限に抑えるのに有用な方法および組成物について記載された特許です。
この特許では、免疫細胞治療法として「ガンマ・デルタT細胞(γδT細胞)療法」を用いています。ゾレドロン酸を用いることにより、γδT細胞の安定的な大量培養が可能となったことから、肺がんや多発性骨髄腫をはじめ、様々ながん種を対象に大学病院等で臨床研究が実施されており、さらにその成果が論文として発表されるなど、期待される治療法の一つとなっています。
「γσT細胞」と「αβT細胞」がキーとなっており、2つの違いを理解しながら読み進めました。
【発明の背景】
同種異系造血幹細胞移植(アロHSCT)は、多くの血液学的悪性疾患を有する患者に対応した根治治療となりうる。
臨床的に好ましい幹細胞供給源は、ヒト白血球抗原(HLA)適合同胞ドナーまたはHLA適合非血縁ドナーであるが、患者(特に、少数民族グループ)の多くは、HLA適合同胞ドナーまたは非血縁ドナーを有さない。また、一部の高リスク患者において、レジストリ検索は時間がかかる場合があるので不適切である。これらの理由から、HLA部分適合(ハプロタイプ一致)ファミリーメンバ由来のドナー細胞などのHSCT移植片の代替となる原料が臨床的に使用されている。
【解決しようとする課題】
ハプロタイプ一致HSCTは、HLA適合ドナーを含まない同種異系HSCTを必要とする患者における、長期生存および治癒を達成することが明らかにされてきたが、ドナーと被移植者との間のHLA格差は、移植片拒絶、移植片対宿主病(GVHD)および免疫の再構築の遅延、その後の感染性合併症という高いリスクを誘発する。
【解決手段】
最小限に処置された末梢血幹細胞(PBSC)を移植した後に、インビボでT細胞を枯渇させる方法と、エクスビボでγσT細胞を富化および/または増殖させる方法、ならびに/あるいはαβT細胞を枯渇させる方法との組み合わせを使用した、造血幹細胞移植(HSCT)方法を提供すると共に、改良型のHSCT方法を提供する。
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